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七月二十四日、土用の丑の日なり。
何事も、なきににたるこそ、いみじくあはれなれ。されば、年に数度の土用の丑の日こそ、心待ちにせらるるものなれ。
今宵、鰻を賞味せんと思い立ちぬ。世に珍しからぬ食べ物なれど、この日ばかりは格別の味わいあり。高価なれば、日頃は遠慮するもの。されど、誕生日に劣らぬ大切な日と心得て、思い切りて求めたり。
鰻の香ばしき薫り、口に含めば、とろけゆく味わい。舌の上にて、夏の暑さを忘れしむるほどの涼やかさあり。かくも贅沢なるものを、しばしば食するは、かえって味わいを損なうものか。
一年に幾度もあらぬこの日を、心して楽しむこそ、人生の愉しみというべきか。日々の暮らしに追われ、ともすれば忘れがちなる、生きることの喜びを思い出させてくれるなり。
食ふ物など、さらにおほくあらんは、さばかり飽かぬ心地もせで、あなあさましと覚ゆるぞかし。(現代語訳)
何事も、ないに等しいほどわずかであることこそ、とても味わい深いものだ。食べ物などが、たくさんあるのはそれほど満足感もなく、むしろあきれるほどだ。
されど、この土用の丑の日の鰻は、まことに尊き食べ物にて、心に深く刻まるるものなり。